晩秋

気がかりだったシューベルト歌曲は無事歌い終えることができた。そのグループの人たちはみんな声楽が専門分野で日頃から舞台に立っている人たちばかりなので、私は本当なら萎縮してしまいそうなのに、恥ずかし気も無く歌えるのは、そのグループが本当に楽しくていい人たちばかりだからだと思う。いつも暖かく迎えてくれて、結局、そんなわけで、春にはPVCCで日本歌曲を歌う羽目になったのだが、とにかく、今回は、私の好きな曲だったし、やっぱり歌うこと自体好きだから歌って楽しかった。

それにしても、自分で以前のように歌えないなあと感じるのは、ちょっと悔しいんだけど、しょうがない。歌手の人たちはホルモン療法とかで、声帯を若い状態に少しでも保とうとする人も多いそうだけど、それは身体に決していいことではないし、今の自分を受け入れるしかないんじゃないかと思う。声楽家は身体が楽器だから仕方ない。その点、ピアノは練習次第でいつまでも弾けるから気楽だ。

いつもこの会がある友人宅は、一時間ほど離れたところにあり、道中も景色がきれいで、家の裏庭には湖が広がり、晩秋の夕方は本当にきれいだった。歌った時には、まだ月は出てなかったが、ちょうど月の光に照らされた森の静けさを歌うゲーテの詩にぴったりくるものがあった。