充実した一日

ストレスフルな日々がようやく落ち着いてきた気がして、ちょっと放心状態の今夜である。
今夜は学期最後のグループ・プレゼンテーションで、みんな頑張ってくれたので、本当に嬉しかった。二クラスとも、とても楽しくてユニークな学生たちのクラスだったが、プレゼンもそれぞれユニークでよく練習してあって、本当に良かった。その後のパーティーでも、本当に楽しかったですね、という声を聞いたし、大成功だったと思う。
片付けとビデオのコピーなどしたあとで、廊下を歩いていたら、まだクラスの子達がおしゃべりしていたので、私も加わって少し話した。これから家に帰って英語のエッセイを書かなくちゃいけないけど、まだ少し放心状態で、気持ちを休めているんだと一人の学生が言った。みんな同じ気持ちなんだなと思った。

ジャパンウィークだの何だの言っても、やっぱり、私はクラスのことが一番気になっていたのだと思う。今夜はようやく、なんとなく気分がほぐれた感じになれた。



それと、もう一つ、ここに書きたいことがある。
先日から、頼まれて或る92歳の女性にピアノを教え始めたのだが、彼女は二年前に脳梗塞で、それ以来、いろいろなことが出来なくなってしまい、痴呆症のような症状が出て来てしまっている。以前はいろいろなことが出来た女性で、ピアノもその一つで、彼女の部屋においてある楽譜はかなり高度な曲ばかりだった。しかし、今はほとんど何も出来なくなってしまったので、娘さんが以前出来たピアノをもう一度と勧めて、昔の記憶を何とか思い起こさせたいという願いで、私にピアノ教授を頼んだようなのである。初め、私はちゃんと役に立てるのかと不安だったのだけど、今日は、二回目のレッスンだったが、とても感動的で、満たされた気持ちになれた。
一つの指で同じテンポで弾くことも、右手や左手でリズムを表現したりすることも出来なくなっていて、先週は幼児が一番初めにする導入の教材ですら出来なかったのに、今日は古いメロディーの「メリーさんの羊」の曲を一緒に弾いたら、なんと、古い記憶が思い起こされたのかもしれない。急に興奮してメロディーを弾き始め、しかもテンポもちゃんと取れて遅くも速くも弾けるほどで、私と合奏も出来たのだ。音とリズムの感覚が鋭くて、私も驚いたけど、娘さんたちが感動して泣き始めて、私もつられて泣けてきて、胸に押し上げてくる気持ちを堪えながらも、素晴らしい!を連発したら、本当?もっと言って頂戴!って、喜んでくれて、本当に楽しかった。
とっくに忘れられていたかと思う記憶の中に確かに入っている音楽を感じ取ることが出来たのだ。こんな素晴らしい体験ができるとは思わなかった。
人間の持つ可能性は本当に無限だと思う瞬間である。絶対にあきらめちゃいけない。生きている限り、不可能ということはないと改めて感じることが出来た。娘さんたちから、こんな経験をさせてもらって本当にありがとうと言われて、単にピアノのことだけど、素晴らしい経験をさせてもらってこちらこそありがとう、と私も本当に嬉しかった。