12人の怒れる男

という劇を舞台と映画で見たことがあったが、まさか、自分がその中の一人になろうとは、想像しなかった。今朝、狭い待合室に入ったときの、誰も話さなくて朝から疲れているというか、つまらなさそうな重い雰囲気は、まさにあの劇の冒頭だった。ああ、なんという場所にいるんだろうと本当に嫌だった。でも、待ち時間が多いと聞いていたので、採点など仕事の大きなかばんをさっそく持ち込んで、仕事を始めた。すぐ誰でもフレンドリーに話し始めるのが普通のこの国で、あんな狭い部屋なのに、誰も話さず、重い感じに顔を突き合わせているというあの感じは耐えられないほどであったけど、仕事に集中できる自分はラッキーだなと思った。
さて、17名の老若男女が呼ばれていて、その中から12名が選ばれるのであるが、裁判官や弁護士、検察官からいろいろな質問がなされて、その中に、自分の信条などで、この件に関して正しい判断が困難だと思われる人はいますか、という質問があったとき、私は、この時しかないと思って、即、手を上げて、話し始めた。自分は、非常に公平な考え方で責任感も強いと思うので、自分としての性格は陪審員に適していると思うが、英語は母国語ではなく、特に聞き取りには時々問題があると思うので、正しい理解ができて正しい判断ができるかどうか、ちょっと自信がない。自分の仕事関係の分野、語学や音楽などでは、語彙も多いが、法律用語には自信がないので、迷惑をかけることを望まないという旨を述べた。もっと下手に話したかったけど、一生懸命だったので、つい、ぺらぺらと話してしまい、まずいなと思ったけど、このように話すことは一応出来るし、読み書きは問題ないが、難しい専門用語を聞き取るのは難しいのだと、追って説明した。
その後、他の部屋に再び待たされて、再度、法廷に戻ったとき、今日の裁判の陪審員が発表された。そして、見事、エクスキューズとなり、やった〜!!もちろん、そんな姿は見せてないけど、内心は本当にほっとした。5名がエクスキューズとなり、法廷を出ることが出来た。その直後、その中の一人の男の人が私に、Wow, what an excellent communication skill you have! (素晴らしいコミュニケーション技術だよ、すごい、)って絶賛してきたし、他の女性も私に、私たちだって法律用語なんか、分からないのよ、ってフォロー。とにかく、私の話しぶりは見事だったらしい。私はなんとか、エクスキューズになれるように必死だっただけなんだけど。だって、この12名を単に選ぶだけなのに、二時間もかかり、その後、裁判が始まれば、もう今夜の授業にも間に合わなくてキャンセルしなくちゃいけないところだったのだ。裁判所関係の友人に早く帰れるようにする方法を聞いていたけれど、警察のような女性がフロントドアに陣取っていて、予め聞いていたように、その人にそういうことを話しても、それは出来ません、そういうエクスキューズは出来ませんと、とても管理的で感じ悪かったので、なんとしても、ここを出なければ、と思ってしまったのだった。実のところ、証人がわずか3人だけの1994年の交通事故で、いまだに解決していないという難しそうな状況。これは簡単に解決しそうにないという感じだったから、初めに、これは大変だと感じたのだ。
しかしながら、自分で言うのもなんだが、私は公平な判断をするのが得意のような気がするし、暇があるならば、陪審員を引き受けても、自分に適しているのかもしれないと思うのだけど、来週に中間試験を控えて、今とてもクラスをキャンセルするわけには行かなかったから、本当にひやひやだったのだ。また来月、呼ばれている日があり、その日も、授業のある日だから今日のようにうまく行くといいのだけれど。。。